How Can We Help?
アメが有効な場合・ムチが有効な場合――フレーミングから考える
アジア病問題で、フレーミングが人の意思決定に大きな影響を与えることを見てきました。
Amos Tversky and Daniel Kahneman, “The Framing of Decisions and the Psychology of Choice,” Science 211 (1981):453
これは、何かの役に立つんでしょうか?
このフレーミングを病気の検出と予防に活用したのが、感情知性(EQ)で知られるピーター・サロヴェイ(心理学者、イェール大学学長)です。
Peter Salovey and Pamela Williams-Piehota, “Field Experiments in Social Psychology,” Amerrican Behavioral Scientist 47 (2004):488
病気の予防について考えてみましょう。
予防というのは、健康問題の発生(損失)を防ぐものです。
予防行動を取るのは、リスク回避的な行動です。
そうか、
①100%の確率で1万円を確実にもらえる
②60%の確率で2万円をもらえるが、0%の確率で全くもらえない
という選択肢だと、人はリスク回避的となり、①を選ぶ傾向があるという話ですね。
リスク回避的な行動は、利益や利得を考えているときに選ばれるのでしたね。
そうです。
そこで、病気の予防には、利得フレーミング型のメッセージの方が効果的と考えられました。
つまり、良い健康という「アメ」を強調するわけですね。
皮膚がんを予防するために日焼けを防ぐという予防行動は、どんなときに取られやすいか、を調べたのがサロヴェイの研究です。
日焼け防止のために、「日焼け止めクリームを塗るメリット」(利得フレーム)と、「日焼け止めクリームを塗らないデメリット」(損失フレーム)に無作為に分けてフレーミングしたところ、利得フレーミングの方が効果的で、より多くの人が日焼け止めクリームを塗りました。
逆に、「ムチ」を強調した方が良い場合もあるのでしょうか?
一方、病気の検出には、損失フレーミング型のメッセージの方が効果的です。
同様にサロヴェイが、「乳がん検診のメリット」(利得フレーム)と、「乳がん検診を受けないリスク」(損失フレーム)で分けてフレーミングしたところ、損失フレームの方が効果的で、より多くの人が乳がん検診を多く受けました。
場合によって、使い分けるのが良いわけですね。
まとめると、望む行動がリスク減少行動なら利得フレーミング(アメ)が、リスク増加行動なら損失フレーミング(ムチ)が効果的、ということになります。
では、この知見を臨床ではどう活かせば良いでしょうか?
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